任意後見制度の手続きの流れと費用を解説
任意後見制度とは、将来の判断能力低下に備えて、信頼できる人に財産管理や身上保護を任せる準備ができる仕組みです。
ただし、契約を結んだだけで直ちに効力が生じるわけではなく、制度は契約締結時と実際の開始時の2段階で進みます。
本記事では、任意後見制度の手続きの流れと必要な費用について、契約段階と開始段階に分けて解説します。
任意後見契約の締結から登記までの流れ
任意後見契約を締結する段階では、公正証書の作成と登記という2つの手続きが行われます。
この段階はあくまで契約の準備段階であり、契約の効力はまだ発生していません。
任意後見契約の締結と公正証書の作成
任意後見契約は必ず公正証書で作成する必要があります。
公証役場において公証人が関与し、本人と任意後見受任者が契約内容を確認したうえで締結します。
契約内容には、代理権の範囲や報酬の有無、任意後見人の義務などが含まれます。
公証人は本人の意思確認を厳格に行い、契約内容を十分に理解しているか、自由な意思に基づいて契約しているかを確認します。
本人と任意後見受任者が公証人の面前で署名押印することで契約が成立し、この時点で本人には十分な判断能力が求められます。
任意後見契約の登記は公証人が嘱託
任意後見契約が締結されると、公証人が法務局に対して登記を嘱託します。
そのため、本人や受任者が別途登記申請を行う必要はありません。
この登記により、任意後見契約の存在が公的に記録され、第三者に対して証明することが可能となります。
ただし、この時点では契約の効力は発生しておらず、あくまで契約が存在していることが記録されるにとどまります。
任意後見監督人が選任されるまでは、契約は効力を持たず、いわば待機状態にあるといえます。
任意後見監督人選任申立ての手続き
本人の判断能力が実際に低下した段階で、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てる必要があります。
判断能力低下後の家庭裁判所への申立て
任意後見監督人の申立てを行うことができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者などです。
申立てには、本人の判断能力が不十分であることを示す医師の診断書が必要となります。
家庭裁判所は、提出された資料をもとに判断能力の程度を確認し、必要に応じて鑑定を行う場合があります。
申立ては、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。
任意後見監督人の選任と契約の効力発生
家庭裁判所が任意後見監督人を選任すると、任意後見契約は正式に効力を発生します。
これにより、任意後見受任者は任意後見人として、契約に基づく代理権を行使できるようになります。
任意後見監督人は、任意後見人の業務が適正に行われているかを監督し、家庭裁判所へ定期的に報告を行います。
監督人には、弁護士や司法書士などの専門家が選任されることが一般的です。
この段階から、本人に代わって財産管理や身上保護に関する具体的な支援が開始されます。
任意後見制度にかかる費用
任意後見制度の利用には、契約締結時、申立て時、制度開始後の各段階で費用が発生します。
費用は主に実費と専門家への報酬に分けられます。
契約締結時の費用
契約締結時には、公正証書作成にかかる公証人手数料、登記嘱託手数料、登記に必要な収入印紙代などが必要です。
公証人手数料は、任意後見契約の場合、1契約につき原則1万3000円とされています。
また、証書を紙で出力する場合には、法務省令で定める計算方法により3枚を超えた分について、1枚ごとに300円が加算されます。
さらに、任意後見契約は登記が必要であるため、公証人による登記嘱託手数料として1600円がかかります。
これに加えて、法務局への登記に必要な収入印紙代2600円および郵送費などの実費も必要となります。
なお、病院などに出張して公正証書を作成する場合には、日当や旅費、場合によっては病床執務加算が別途必要となることがあります。
任意後見監督人選任申立て時と開始後の費用
申立て時には、収入印紙800円と予納郵券数千円程度が必要です。
鑑定が行われる場合には、数万円から10万円程度の費用が発生することがあります。
制度開始後は、契約内容に応じて任意後見人への報酬が発生します。
また、任意後見監督人への報酬は家庭裁判所が決定し、一般的には月1万円から3万円程度とされています。
まとめ
任意後見制度は、契約締結段階と効力発生段階の2段階で進む制度であり、契約を結んだだけでは開始されません。
公正証書による契約締結後は公証人が登記を行いますが、実際に制度が開始されるのは、家庭裁判所による任意後見監督人の選任後です。
費用も契約時、申立て時、開始後と複数の段階で発生するため、事前に全体像を理解しておくことが重要です。
具体的な手続きや費用は個別の事情によって異なるため、将来に備えて検討する際には、弁護士に相談することをおすすめします。










