医療過誤
「医療過誤」を理解するためには、まず「医療事故」について知っておく必要があります。
医療事故とは、医療行為に関連して起きてしまった良くない結果のことです。そのうち、医療側に法的責任があるものを「医療過誤」といいます。
医療過誤には、大きく二つの種類があります。
■病状悪化型
この類型では、原告側は、基礎疾患が悪化、重篤化したり、合併症を併発したりして良くない結果(後遺症・場合によっては死亡)の原因となったことを、その医学的可能性に言及しながら立証します。
被告側(医師)は、原因は他にあることや原因が不明であることを主張して争うことになります。
次に、基礎疾患に対して適切な診察、診断、治療を行っていれば、良くない結果が回避できたことを前提として、実際にそのような結果が起きることが予見できたこと、それを受けて適切に診察・診断・治療する義務に違反したことを主張・立証します。それに対し、被告側(医師)は過失のないことを主張立証します。例えば、そのような良くない結果を避けられる可能性はなかった、などです。
■医原病型
この類型では、特定の医療行為と良くない結果との因果関係を、医学的可能性やその行為と結果発生とが時間的に接着していることなどに言及しながら主張・立証していきます。
被告側(医師)は、病状悪化型と同様に、その結果発生が他の原因によることや原因が不明であることを主張して反論します。
また、この類型においては、医原病発生が予見可能であったということを前提に、
・当該医療行為の医学的適応の誤り
・実施の際の付随的注意義務違反
・良くない結果についての説明と同意取得義務(インフォームド・コンセント)違反
が問題となります。
インフォームドコンセントに関連して、医師には説明義務が課せられます。素人である患者にもわかりやすく、理解できるものでなければなりません。
また、医師が発生した損害に対してどの範囲で責任を負うか、は説明義務違反とその損害発生との間に因果関係が認められるかどうかで決まってきます。因果関係の存否の判断はとても難しいので、法律の専門家たる弁護士に詳しい事情を相談してみるのがおすすめです。
相談を受けた弁護士は、通常医学に関する文献等を参照しながら、事件の問題点を探っていきます。しかし、弁護士は医療の専門家ではないため、協力医の存在がカギとなります。
協力医とは、医療過誤事件に関して、自らの医学的知識や経験に基づいて、患者側に様々な協力をしてくれる医師のことです。
具体的な協力の内容としては、例えば私的鑑定意見書を書いてもらう、というものがあります。かつては、鑑定は裁判所の選任した鑑定人に対して行われるもので、当事者の選任した専門家によって行われる私的鑑定は証拠とはなりにくいと考えられていましたが、最近では、私的鑑定意見書も証拠として扱われるようになってきていると言われています。
医療過誤事件は、訴訟に発展することもあります。医療過誤事件の大きな特徴の一つは、証拠の大部分は医師側にあるということです。そのため、証拠が改ざん・隠匿される可能性があります。カルテの開示をもとめるなど、証拠保全の手続きを速やかに行わなければなりません。
井上雅彦法律事務所では、相模原市、町田市、横浜市、厚木市を中心として、神奈川県、東京都、埼玉県、静岡県の相続やその他の民事・家事事件のご相談を承っております。医師による医療ミスや、医療事故について皆様が抱えるトラブルに関して、より良い解決のために力を尽くします。お困りの際は、お気軽に当事務所までご相談ください。