離婚手続方法と流れ―3つの種類ごとに手続方法を紹介
離婚予定の方の中には、離婚手続の方法を知りたいという方がいらっしゃいます。
離婚の方法は大きく分けると3つの種類があり、状況により採用できる方法が違います。
したがって、どのやり方で離婚することになるのかで手続方法とその流れにも違いが生じるので、その点には注意が必要です。
本記事では、離婚検討中の方のために、離婚の種類別に手続の方法とその流れを解説します。
離婚の種類は大きく分けると3つ
離婚の方法は大別すると次の3つになります。
- 協議離婚
- 調停離婚
- 裁判離婚
3つの中で最も多い離婚の手続方法は協議離婚です。離婚件数全体の約9割がこれに該当します。
協議離婚で合意に達しなかった場合、調停離婚もしくは裁判離婚の手続を踏むことになります。
協議離婚の手続とその流れ
協議離婚は、配偶者同士が話し合いをして離婚することに合意し、離婚届に署名・押印することで成立します。
協議離婚の手続やその流れは、以下の通りです。
- 離婚について双方で合意する
- 離婚条件の話し合いや交渉
- 離婚協議書に話し合いや交渉で決定した離婚条件を記載
- 離婚協議書を公正証書にする
- 離婚届を役所に提出
離婚条件の話し合いや交渉の中で取り扱うべき項目は次の通りです。
- 慰謝料
- 財産分与
- 年金分割
- 親権
- 養育費
- 面会交流
口頭のみの約束で協議離婚することも可能です。
しかし、金銭や子どもが関係する条件については、離婚後に約束を守らないといったトラブルが起こる可能性が高いので書面にしておくことをおすすめします。
離婚協議書を公正証書にすることも有効な手段です。
公正証書には強制執行承諾文言を付けることができます。
強制執行承諾文言があれば、慰謝料や養育費の支払いがないときに、強制執行に移り相手の財産を差し押さえることが可能です。
協議離婚をする前の段階で弁護士に相談すれば、協議離婚をする当事者は、法律相談という形で弁護士からのバックアップを受けることができます。
また、協議離婚で弁護士に依頼をすれば、代理人として相手側と交渉してもらうことも可能です。
協議離婚において離婚協議書を作成しそれを公正証書にするというケースでも、弁護士に依頼すれば離婚協議書を作成してもらえます。
加えて、公正証書作成の申込や公証人とのやり取りについてもサポートを受けることが可能です。
調停離婚の手続と流れ
協議離婚で離婚するのが難しい場合、次の段階として調停離婚の手続に移ります。
調停離婚は家庭裁判所の調停委員会を利用して、離婚条件などについて話し合いや交渉を行い離婚する方法です。
調停離婚における手続とその流れは以下の通りです。
- 家庭裁判所に調停を申し立てる
- 調停委員が夫婦双方の話を聞き、意見の調整を図る
- 調停の結果、合意が成立すると調停調書に合意の内容を記載
家庭裁判所による調停は、裁判官1名、家事調停員2名で構成される調停委員会が間に入り話し合いを進めます。
したがって、当事者同士だけの話し合いよりも冷静な話し合いを期待できるのが特徴です。
調停手続では、離婚についての話し合いはもちろん、離婚後の親権、親権者とならない親と子の面会交流、養育費、財産分与や年金分割の割合、慰謝料について話し合います。
離婚調停が成立すれば、調停手続で双方が同意した内容について調定調書が作成されます。
調停調書は確定判決と同じ効力を持つのが特徴です。
たとえば、相手方が慰謝料や養育費の支払いなどについて約束を守らない場合、強制執行で相手方の給与や預貯金などを差し押さえることができます。
調停離婚の段階においても、弁護士に相談することが可能です。
弁護士に相談すれば、調停員との話し合いにおけるアドバイスや調定のときのサポートを受けることができます。
裁判離婚の手続と流れ
協議離婚や調停離婚で離婚が成立しなかった場合、最後の手段として裁判離婚の手続を踏むことになります。
調停離婚の手続を踏まずに、協議離婚からいきなり裁判離婚の手続を踏むということはできません。
裁判離婚における手続と流れは以下の通りです。
- 夫婦のどちらかが家庭裁判所へ離婚訴訟を提起
- 裁判期日に裁判で夫婦双方が主張・立証
- 夫婦双方への尋問
- 判決の前に裁判所による和解案の提示(裁判所の和解案に同意すれば和解調書が作成され判決を経ずに離婚が成立)
- 裁判所が離婚の可否や慰謝料などを判断(和解が成立しない場合)
- 離婚を認める判決が出た後、相手方が控訴せずに2週間の控訴期間が経過すると確定判決となり離婚成立
離婚裁判で、離婚が認められるには、法的離婚事由の存在が必要であり、裁判ではそれがあったことを立証しなければなりません。
民法770条1項各号に定められている離婚事由は以下の通りです。
- 配偶者の不貞行為
- 配偶者による悪意のある遺棄
- 配偶者が3年以上生死不明
- 配偶者が強度の精神病を患っており、回復の見込みがない
- その他婚姻を継続し難い重大な事由がある
配偶者の不貞行為はいわゆる不倫のことです。
不貞行為があった期間や、不倫相手への愛情の有無や強弱で不貞行為の該当性が変化することはありません。
配偶者による悪意ある遺棄とは、同居・協力・扶助といった配偶者としての義務を故意に怠る行為です。具体的にはギャンブル中毒で働かない、生活費を一切家に入れないといったものがあります。
婚姻を継続し難い重大な事由として認められる可能性があるものには、性格の不一致、多額の借金、家庭内暴力、配偶者の親族との不和、犯罪による長期の服役などが挙げられます。
裁判離婚をする場合、自分の主張を訴状、答弁書、準備書面などの書類で準備し提出しなければなりません。
さらに、離婚裁判における手続は複雑なので、裁判所からの説明を受けてもその意味や内容が分からないということもあるでしょう。
加えて離婚裁判は原則公開法廷でおこなわれるので、夫婦のプライベートな内容が明らかになるだけでなく、お互いの言い分を感情的に言い合うことも考えられます。
離婚裁判に関係する手間や時間、精神的負担を考えるなら、専門的な知識とノウハウを持っている弁護士に相談・依頼するのが最善です。
まとめ
協議離婚・調停離婚・裁判離婚の3つについてその手続や流れを紹介しました。
「有利な条件で離婚したい」「無駄に離婚交渉を長引かせたくない」といったケースでは、協議離婚の段階で専門家である弁護士に相談することをおすすめします。