遺言書の保管方法
遺言書をせっかく作成しても、相続の時に見つからなかったり内容に疑義が生じたりすると、その効力を十分に発揮できません。
特に自筆証書遺言の場合は、従来から自宅での保管による紛失や改ざんのリスクが指摘されてきました。
近年は法務局での遺言書保管制度も整備され、より安全に遺言を管理できる環境が整っています。
今回は、自筆証書遺言や公正証書遺言など形式ごとの保管方法の違いや、それぞれのメリット・デメリットを整理します。
自筆証書遺言の保管方法
自筆証書遺言の保管方法としては、以下が代表的です。
- 自宅保管
- 貸金庫保管
- 自筆証書遺言書保管制度
それぞれ確認していきましょう。
自宅保管
自宅保管は、身近な保管方法です。
耐火金庫や防湿ボックス、鍵付き引き出しなどに入れて保管します。
メリットは、コストがほとんどかからず、手軽に実施できる点です。
手元に遺言書の原本があるため、思い立ったときにいつでも書き直しができます。
ただし紛失・改ざんのリスクがあるのと、発見が遅れてしまう可能性もあります。
また、相続開始後は家庭裁判所の検認が必須です。
貸金庫保管
自筆証書遺言を自宅ではなく金融機関の貸金庫に保管する方法もあります。
貸金庫は耐火性や防犯性に優れ、外部からの盗難や災害による滅失リスクが低いというメリットがあります。
また、銀行職員以外は容易に中身に触れられないため、機密性を保つ点でも安心です。
一方で注意すべきなのは、遺言を取り出すために相続手続きをしなければならず、発見が遅れる点です。
そのため、あまり推奨されない方法でもあります。
自筆証書遺言書保管制度
2020年にスタートした「自筆証書遺言書保管制度」を利用すれば、法務局に預けて公的に管理してもらえます。
遺言書の原本と画像データが保管されるため、紛失や改ざんのリスクを大幅に減らせるのが大きなメリットです。
さらに同制度を利用した自筆証書遺言は、相続開始後に家庭裁判所で「検認」という確認手続きを受ける必要がありません。
相続人がスムーズに手続きを進めやすくなります。
生前に遺言の内容を確認できるのは本人に限られ、本人以外の家族は相続開始後にならないと閲覧できません。
死亡後は、相続人などが法務局で「遺言書情報証明書」や画像データの交付を請求できるため、発見性の面でも安心です。
ただし、あくまで「遺言書の保管と発見性の確保」を目的としたものであり、遺留分の侵害がないかなど内容の有効性を保証するものではありません。
制度を利用する場合でも、内容そのものが法的に適切かどうかについては専門家に確認しておくと安心です。
公正証書遺言の保管方法
公正証書遺言は、公証役場が原本を厳重に保管してくれます。
遺言者や受遺者などは、必要に応じて交付される「正本」や「謄本」を利用して相続手続きを進めることになります。
原本が公的機関に保管されるため、自筆証書遺言のように紛失や改ざんの心配をする必要はほとんどありません。
また、公正証書遺言は「発見されないまま効力を失う」というリスクを避けられる仕組みも整っています。
遺言者が亡くなった後、相続人は全国の公証役場を通じて遺言の有無を検索・照会できるため、執行段階で「遺言が見つからない」という事態を防げます。
さらに公正証書遺言は、家庭裁判所での検認手続が不要です。
相続開始後はすぐに不動産の名義変更や金融機関での相続手続きに利用できるため、実務の面でもスムーズに活用できます。
ただし、正本や謄本は、本人や遺言執行者が個別に保管することになるため注意が必要です。
また、遺言執行者を指定している場合は、その連絡先を明記しておくことも重要です。
遺言書の封筒に名刺を入れておく、付言事項に記載しておくなど、死後に確実に連絡が届く仕組みを残しておくと円滑に執行へとつなげられます。
秘密証書遺言の保管方法
秘密証書遺言は、その名のとおり内容を秘密にしたまま作成できる遺言方式です。
遺言の本文は本人が作成し、封をしたうえで公証人に「確かに存在している」という認証だけを受けます。
公証人は内容を確認せず、あくまで存在を保証するにとどまるため、原本の保管は本人が自ら行わなければなりません。
相続が開始した後には、家庭裁判所で「検認」を受ける必要があります。
封印されたままの状態で保管されるため、開封は原則として裁判所で行われます。
秘密証書遺言の最大のメリットは、内容を完全に秘匿できることです。
しかし一方で、原本を自分で保管することになるため、紛失や未発見のリスクは自筆証書遺言と同程度です。
また、方式の不備があれば無効となる可能性がある点にも注意が必要です。
実務上は、自宅での保管にあたって耐火性のある金庫を利用したり、所在を記したメモを別途残しておいたりといった工夫が欠かせません。
さらに信頼できる人物に「秘密証書遺言を作成している」という事実だけを伝えておくことで、発見されずに効力を失うリスクを減らせます。
まとめ
遺言書は、作成するだけでは十分ではありません。
確実に見つかり、効力を発揮できる形で保管するのが重要です。
不安がある場合は、弁護士などの専門家に相談することも検討してください。











